お寺って面白い
       大統寺住職 渡邊宗徹

「生まれたら神社に、結婚は教会で、亡くなったら寺に」と言われてから久しくなりましたが寺の住職としては悲しく残念です。亡くなられた方を懇ろに弔い大切にすることは重要なことですが、現在生きている人々に深い関わりを持っていく努力が不足しているのでしょうね。

 お釈迦様は生きとし生けるもの達が、様々な苦しみや悩みから解放され明るく力強く生きぬくための教えを確立し、相手の状況に適した対応をされました。だから仏教はむしろ今現在悩みを抱えて生きている我々のものであると言えます。

 お釈迦様の教えを受け継ぐ仏弟子の一人として出来る事から始め様と努めています。まずは自分の寺を檀信徒や近隣の人々の心のより所にするためには、皆さんが入り易くなければいけないでしょう。時々、一般の人の積りになって道路から自分の寺の門を入り本堂・書院・墓地へと歩いてみます。

 掃除が行き届き、雑草やゴミが落ちていないかを確認しながら歩きます。清浄な環境こそが心を癒すのに、第一に必要であると思うからです。次に本堂にお参り出来るようになっていて荘厳(飾り付け)が簡素でしかも配置がきちんとすっきりしているかを見ます。清清しい思いでお参り出来るようにするためです。墓地も同様です。

 次に、普段から人々が出入り出来るようでなければ入り難いですね。そこで昨年から寺子屋教室を始めております。

 最初に、檀家の画家さんが手を挙げてくれて「水彩画」が始まり、次には檀家の書道の先生が「書道」を、茶道教授の墓参に来たお弟子さん達が先生への御恩返しにと「茶道」を、茶道の生徒さんが「華道」を担当してと芋づる式に増えました。住職も汗をかかねばと「写経」と「坐禅会」を始めて月に十回開催の寺子屋になりました。寺子屋参加者の半分は檀家さんではありませんが、地域に開かれていれば良いのです。むしろもっと気楽に参加出来ないかを考えております。

 次代を担う子供達にも親しみ易くと考え、昨年の夏休みは近所の手芸の先生指導で「万華鏡作り」を実施し、冬休みはお正月とクリスマスに使える「リース作り」を春休みには鉄道友の会仙台支部の協力で「鉄道模型の実演」を実施しました。白河駅長さんにテープカットに来ていただき雰囲気が出ました。寺として大切な行事が除夜の鐘です。小さな寺ですがこの釣鐘は松平定信公が山形から呼んだ鋳物師に鋳造させた由緒あるものです。檀家さんの協力で「甘酒」等を振舞い寒さをしのいで戴き、百五十人の煩悩が霧散しました。この夏休みは「マイうちわ作り」を実施し、秋には、寺宝「谷文晁筆の涅槃図」を一般公開します。

 お寺って面白いと心底思っております。皆が気楽に集まれる寺にするにはどうしたら良いか。皆の心のより所となるにはどうしたら良いか。次々に考えては実行できるなんてことはお寺だから出来るのだと思います。お寺の信用度はまだまだ大きいですよ。勿論、多くの方々のご支援とご協力なしには出来ないことです。寺離れと言われながら「四国の霊場詣で」は老若男女で賑わっています。やはり人々は心のより所をどこかに求めている様です。今日もそれに少しでも応えられたらと無い智恵を絞っております。

 問題は住職が楽しんでいるばかりではなくて、皆が楽しんでくれなきゃいけないということです。目下のところ、これが大変気がかりです

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